妊娠
著者 黒島 宮城
 
「もういいだろ」
 
 夫は背後から妻の肩に手を置いた。
 
「でもいきなり増えたから」
 
 妻は拳を握り、涙を滲ませながら振り返る。
 
「勘違いだったんだよ。きっと仕事をやめたせいだ。辛いだろうが認めるしかない。俺だって残念なんだ」
 
「あなた、ごめんなさい」
 
 妻は手で顔を覆って泣き始めた。その拍子に、握っていた温度計にも似た器具が床に落ちた。
 
 夫は優しく妻の体を包み込む。
 
「なんなら俺も付き合うから、痩せよう。な?」


あとがき

Rhapsody In Blue